金曜の深夜2時過ぎから、うちの地方ではやってます『SEX AND THE CITY』、今もうシーズン4になっちゃってるのかな? そんなに見てる気しないんだけど・・・。
夜中なんで当然ビデオ撮っといて、次の日に見ます。30代独身の働く女性ニューヨーカー4人の、恋愛と友情のドラマなんですが、恋愛というよりタイトル通りほとんどエッチ関係の話題が多いです、が。 なにがおもしろいってね、あたし旦那と見てて、二人が揃って感心したシーンがあるんですよ。 主人公が外国に仕事で行った恋人に、現地ではまだ夜中って時間に電話かけて、ヒステリー起こす場面があったんだけど、んもう、女のヒスってまさにああいう風よね!! って感じで、男からすればめちゃくちゃで支離滅裂なんだけど、女からするとすっごく筋が通ってる訳。よくあんな、まさにその通り! って台詞が書けるな~と、それぞれ男女の立場で感心しましたよ。 んでまたこの4人の衣装がいつもきわどくて、素敵なの~。日本じゃ絶対できないような格好も度々あるけど。それ服なの? 下着じゃないの? って感じの。 ご飯食べながらアッチ方面の話ばっかりしてるドラマなんで、あまりにも明け透けでいやらしさゼロです。はははは。 声優さんたちの演技もすごく上手で、笑えるんだよね。あまりにも弾けすぎてて付いていけない感も若干はあるけど、恋人の気持ちが見えなくて切ない気持ちとかは、日本人でもアメリカ人でも、同じですしね。 お暇があったらビデオででも、試しに一話いかがです? どうせ暇潰すなら、このドラマおすすめです。一話30分で、完結するし。 あー、それにしても眠い。さっき昼寝から起きたとこだっていうのに。。。 午前中、今日始めて会ったうちのより3ヶ月小さい女の子と、そのママさんと、公園で遊んできたから、はしゃいでたチビはまだぐっすりですが。 チビはなぜか社交性の塊で、誰かが来ると平気で寄ってって遊びたがるんで、だんだんあたしまで知らない人とばーばー喋れるようになってきたよ。ま、子供の年が近いという接点はありますが。でもそのママさんも、その子は下の子だって言ってたな~。 チビ産んだときのね、隣の病室にいたママさん、カルテの入った袋がチラッと見えたら同じ年だったのです。でもおっぱいいっぱい出てて、いいですね、っつったら、二人目だからね~って言ってた・・・なんとなくショックだったわ・・・。 #
by new-chao
| 2005-05-13 14:29
| チャオさんの独り言
99ショップで旦那がぱりんこゲット!
しかしよく見ると、ミニパックって書いてある。袋の裏を見てみると、2枚×11袋。11ってあーた、普通のが21袋なんですよ! 21袋入りで98円(税込み)で売ってたことがあるのに、その約半分で103円ってどういうこと!! やっぱお菓子はスーパーですよね! 高くても168円でしたしね!! なんか興奮しすぎだわ。びっくりマーク多すぎる。 「24サードシーズン」を見てるのです。 Ⅰを見たときは初めてなんで、んもうめちゃめちゃハラハラしたんですが、Ⅲともなるとちょっと余裕がありますね。なんか危機になっても、まだあと半日あるし、とか考えちゃってダメですね。ダメ、とか言ってる割にはどきどきするんで、鼻息荒くしながら見てますけど。 だいたいジャック・バウアー強すぎるし、とっさの判断とかすごすぎるし、すぐ怒るし、見てると『ジャックの馬鹿!!』と怒鳴りたくなりますね。なる、というか怒鳴ります。Ⅱなんかあのたった24時間で、ジャック一体何人殺したの? いくら自分が総製作指揮(ちがったかしら?)取ってるからって、自分をかっこよくしすぎよ、キーファー!! 大統領がいいですね~、真面目で、誠実で、有言実行でね。本当にあんな人が大統領やってたら、いろいろいい風になるんじゃないかと思います。 なーんてなんか、文句言ってるように聞こえるかもしれませんが、好きなんですけどね。あっちのドラマはみなさん演技が上手で(ついでに吹き替えする声優さんも上手だし)迫力あるんで、よく見ます。 コメディだと今見てるのは、金曜の深夜にやってる「セックス&ザ・シティ」。これの話はまた今度。面白いのよ~。 #
by new-chao
| 2005-05-12 10:04
| チャオさんの独り言
こんにちは。
久しぶりに『黄金のドア(3)』アップ。 昨日は妹が泊まりに来ていたので、一日パソコンを占領され、ほとんど何にもしなかったんですが、夕方、二人でいろいろ占いのサイトを回って遊びました。 そしたらその中に、『最期の言葉占い』だったかな、そんな感じのがありまして、そこに『あなたのラッキー決め台詞』というのがあったのです。 ちなみにあたしの場合は、 だったら、おまえがやってみろ!! でした。決めポーズ付きで言うとなおラッキーだそうで、今ポーズを思案中。 しかしこの喧嘩腰の台詞・・・実はよく言うな、あははは。 ってことは当たってるってことかしら、この占い。 妹の場合は『オシャレ、完了!』だそうで、そっちはなんか可愛いな。 あー、今何気にテレビ見てたら、チビッコが鳥取砂丘でらくだに乗ってる・・・。 らくだにはまだ乗ったことないなあ。 コアラは抱っこしたことあるし、野生のイルカに触ったこともあるけど、そもそも本州で京都より西にはまだ行ったことない。日本って広い・・・。 コアラを初めて抱っこしたときの触り心地は、 石立鉄夫の頭ってこんな感じ? だったんですが、みなさん石立鉄夫ご存知? 知らん? まぁいいや。わーかめ好き好きー♪ですよ。 『少女に何が起こったか』なつかしぃ・・・「紙の鍵盤じゃ指が沈まない!」ですよ、キョンキョンですよ。まぁいいや。 何の話だか判らなくなってきたところで、今日はここまで。 #
by new-chao
| 2005-05-10 17:19
| チャオさんの独り言
水都を迎えにきたのは、先刻すれ違った人とは別の、だがやはりメイドらしい若い女だった。背中の真ん中まである長いブロンドを三つ編みに結って、襟の立った紺色のドレスを着ている。
そこへ到着するまでに見かけた女は、全員髪を伸ばし、丈の長いスカートを履いていたので、この国ではそれが当たり前なのかもしれない。アクセルのように長髪の男はいても、ショートカットにズボンの女はいないようだ。 アクセルにどう言われて来たのか、案内人は「どうぞこちらへ」と言った以外は何も余計なことを言わず、黙って城の裏の方へと水都を連れていった。 裏門らしい小さな門を横目で見て通りすぎ、馬舎の脇、ぬかるんだ土に雑草が繁っているところまで来て、しゃがみ込む。草に埋もれていた鉄の把手を見つけて引き上げると、五十センチ四方ぐらいの鉄の蓋が持ち上がった。地下へ階段が伸びている。 「ここには明かりがありませんので、足元に気をつけて。降りられて左です」 「どうもありがとう」 水都が礼を言うと、メイドは彼女を見てうっすらと赤くなった。アクセルが自分のことを何と言ったか、少し気になる。 「お入りになられたらこの戸は閉めますが、中に別の者がおりますのでご安心下さい」 「判りました」 階段は十段ほどと少なく、水都が降りきるまでメイドが天井の蓋を開けておいてくれたので、転ぶこともなく降りられた。階段はレンガでできていたが、床は土を固めてあるだけだ。言われた通り左手に行くと、薄暗いがチラチラする明かりが見える。 上手いこと言って、自分まで閉じ込めるつもりかという疑いが、一瞬頭をかすめたが。 それは杞憂だった。水都が歩いているのは廊下で、格子の影が薄く伸びているのが見える。メイドは誰かいると言ったが、実際にはいなかった。 三畳くらいの牢は廊下を挟んで二つ、片方は空だ。もう一つは。 「……芳真?」 呼びかけると、ガタッと格子が鳴った。 「っ、なんでおまえまでここに。あとの二人は?」 「私だけだ、連れて来られたんだ。大丈夫か」 「一応な」 芳真はTシャツを剣で縦に切られてしまったので、薄い胸と、そこにくっきりと浮かび上がる傷痕が、隠しようもなく見えている。彼が犯人ではないとは思うが、これが火傷の痕なのも事実だ。 「肩の怪我は?」 「こんなの擦り傷だ、騒ぐほどのもんじゃねえよ」 「そうか」 牢の中も床は土だが、三方の壁と天井は大きな石でできていて、地下なので当然窓はない。 残る一方は鉄格子で、格子の間から頭は出せるが、それ以上はとても無理だ。錠は頑丈そうな南京錠の親分で、ツルハシか何かあれば壊せるかもしれないが、ここにはない。 「おまえ、連れて来られたって、何のために?」 「ここの世継ぎの君の、妻にするためだと」 「は?」 「私にもよく判らない」 選ぶ余地がまるっきりなかった訳ではないことは、彼女は言わなかった。芳真を一人で行かせるよりは、少しでも近くにいた方がいいだろうなんて考えて、ついてきたなんてことは。 水都が降りてきた階段の反対側は壁に突き当たり、そこから左右に廊下は伸びているらしい。城の地下へ続いているのだろう。 その突き当たりの壁は、胸ぐらいの高さの部分が一部掘ってあり、鍵がしまえるようになっている。ただしその前の扉も鉄格子で、隙間の幅はせいぜい五センチ、女の手でも通らないだろう。 「芳真こそ、その火傷の本当の理由は何だ?」 水都に見える範囲に、見張りはいない。 他に誰かが聞いている気配はないが、芳真は水都からフイッと目を逸らした。廊下に点けられた松明の明かりはチラチラと揺れて、表情までは見えない。 「芳真」 「おまえには関係ない」 芳真は格子から手を離し、投げやりに床に座り込んだ。 水都は口には出さずに、胸の中でやれやれと溜め息をついた。 「でもおまえがここの総統とやらを襲った訳じゃないんだろう、信じていいんだろう?」 「好きにしろよ」 「なあ」 芳真にこっちを向かせようと、水都も格子を掴んだまま、ずるずると廊下の床に座った。 「舞ちゃんたち、今どこでどうしてるか、私にも全然判らないんだ。頼れるの芳真しかいないんだよ。どうやったらここから出て、四人そろって帰れるか、一緒に考えよう」 しゃがんだのが功を奏したのか、芳真は不思議そうに水都を見た。 「何だよ?」 「水都って変な奴。なんでこんな時に、そんなに冷静なんだよ?」 おまえこそ、何ガキみたいに拗ねてるんだ、と言いたかったが、水都は我慢した。 「パニック起こしても何の役にも立たんだろう。大体ここはどうもおかしい。ダーク・サンなんて国、聞いたこともないし……一人で考えるより、三人寄れば文殊の知恵って言うじゃないか」 「ここには二人しかいねーじゃん」 「三人だよ」 「っ!?」 不意に頭の上から降ってきた声に、水都はすかさず立ち上がった。一瞬、アクセルの声かと思ったが、違う。 背が高い。祥一郎と同じぐらいか、この男の方がもう少し高くて、百八十五ぐらいはあるかもしれない。背は高いが体つきはひょろりとして、ちょこんと小さな顔は年齢不詳だ。 ライトブラウンの短い巻き毛に、ブルーの目、若いのかそうでもないのか……三十代半ばぐらいだろうか。濃いグレーのローブを着て、左手にランプを持っている。 明かりを持って歩いて来たのに、どうして二人ともこの男が近づいてくることに気がつかなかったのか。 「ここから出たいんなら、方法はあるよ」 顔も姿もまるで違うが、声だけはアクセルとそっくりな、何となくお坊ちゃんぽい顔のその男は、まずランプをずいと芳真の方へ近づけて、それから腰をかがめて、ぬっと自分の顔も突き出すようにして言った。 「真犯人を見つければいいんだ」 「……おっさん、誰だ?」 「おっさんとは心外な」 男は大仰に憤慨すると、今度は水都に向かって顔を近づける。 「いくつに見えます?」 「さ、……」 冷静の鉄仮面を持つ水都も、つい一歩後ずさってしまった。 「三十……六? ぐらい?」 「三十六!」 男が叫んだので石の天井に声が反響した。芳真が顔をしかめる。 「三十六のどこがおっさんなんだ?」 「三十六なら充分おっさんじゃねーか」 「フンッ、若い時なんて一瞬で終わるもんだぜ、兄ちゃん。特に地下牢なんかに入ってるとね。吠えろ吠えろ」 「……何なんだよ、こいつは?」 芳真の質問に水都が首を傾げかけると、男は水都の方を向いて二人の間に割り込んだ。 「申し遅れました。私はクール・ロビン、ヴァンス総統家に雇われている占い師兼魔法使いです、どうぞよろしく」 「はあ、池崎水都です、こちらこそ」 「何言ってんだ、おまえまで」 呆れた芳真がぶつぶつ言うのを聞きとがめて、名前と顔が合っていないように水都には思えるクールは、ジロリと彼を睨んだ。 「せっかく出る方法を教えてやってるのに、感謝の心を知らない兄ちゃんだねえ」 「何がだよ。真犯人を見つけるって、大体俺はこん中じゃ探しようがねーだろうが」 「鍵はすぐそこにあるよ。扉に格子は嵌まってるから手は入らないけど、小人がいれば取って来れる」 当たり前のことのようにすらすらと言うので、水都は笑ってしまった。 「それより、手っとり早く犯人を魔法で探せないんですか?」 「あいた」 クールはぴしゃっと自分の額を叩いた。 「鋭いところを突きましたね、さすが美人は頭もいい。……アクセル様がお待ちですので、一緒に来てもらえますか?」 言い方は優しいが逆らえない感じだ。水都は素直に頷いた。 「判りました」 「また来るからね、兄ちゃん。では水都さん、こちらへ」 クールがランプで足元を照らして歩きだすので、水都も一度芳真を振り返ってから彼の後を追って歩きだした。肝心の相談はできなかったが、居場所が判っただけましだ。 「おっさん、小人なんかいる訳ねーだろお!」 芳真の声が二人の後を追って、先刻のクールの声以上に廊下に響いた。 #
by new-chao
| 2005-05-10 12:58
| 小説-黄金のドア(3)
4. 番人付き森林デート
小人なんている訳ない。 ……それが、いたりして。 「どーしよ……」 舞は情けない顔で、胸ポケットの祥一郎を見下ろした。 「全然、街道に出そうにないですよぉ」 日が傾いてきた感じがする。先刻より木の影が濃くて、前が見づらい。 「大丈夫だって、ひたすらまっすぐ歩いて行けば、絶対いつかは終わるから」 「でも」 「横向くな、どっちが前だったか判んなくなるだろ」 あの願い事の広場を出てから、どのくらい歩いて来ただろう。とにかくまっすぐ行けという祥一郎を信じてずっと足を動かしてはきたが、元々道のあるところを歩いている訳でもなければ、目印もない。 ないと言えば、あれほど漂っていたキンモクセイの匂いも今はなく、当然キンモクセイの木も見当たらなかった。鳥の声もせず、ドラゴンの気配もなく、聞こえるのは自分とかしげの足音だけだ。 これが、恋人と二人で森林浴デート、だったら、絶好のロケーションだったろうが。 「祥一郎さん」 彼の言う通りにこれが夢で、だから腹も減らずトイレも不要だとしたら、それはそれでもいいのだが、一つまずいことがある。痛みつきのリアルな夢だけあって、長い時間歩いていると当然、なってしまうのだ。 「疲れた」 言うと同時に舞は足を止めた。もうどっちみち、土や砂で汚れているので、スカートのことは気にしないで落ち葉の上に座ってしまう。 「ええ、もう疲れたのか? おまえ中学生だろう、若いのに情けない奴だなー」 「じゃあ祥一郎さん自分で歩いて下さいよ、運んでもらってるくせに。ポケットの中じゃ判んないかもしれないけど、先刻からずっと上り坂になってんですからね」 「何言ってんだ、俺だって大変なんだぞ、揺れるから酔いそうでさ。うっ、吐きそう」 「やっ、やめてよあたしのポケットの中にするのはっ」 「嘘でぇす」 「ばかっ」 舞の言い方がキツかったのか、辺りをくんかくんかと鼻チェックしていたかしげが、叱られたようにビクッと耳を後ろに倒した。 「かしげに言ったんじゃないよ、気の小さい犬ねえ」 どうしてかしげはこう怯えてばかりいるのだろう。単にそういう性格なのか、誰かに酷く苛められたことがあるのだろうか。 いつも周囲の顔色を窺って、人の手の届かない、でも目の届く範囲にいて。 「ごめん、かしげ。……おいで」 犬はホッとしたように舌を出して、低い位置で尻尾を振って少し側へ来た。指を伸ばすと、どうにか鼻の頭に指の先が触る。 軽く撫でて、舞は深く息を吸い込んだ。酸素が新鮮で、肺の中が現れる感じがする。 「空気が旨いな」 舞の思ったことが判ったみたいに同じタイミングで言って、祥一郎はポケットから小さな手を目一杯伸ばして伸びをする。 「祥一郎さんの住んでるとこって」 先刻まで喧嘩っぽいことをしていたのを忘れたように、舞はもう普通の口調で訊いた。 「都会の方ですか」 「都会ってほどじゃないけど、街中だな。おやじは田舎に引っ越したいみたいだけど、仕事の都合であんまり遠いと不便だから。おまえんちは?」 「前の家は街の中だったけど、つい最近田舎に引っ越したんです。こんな山の中じゃな いですけど。あたし転校生だから友達いなくて、他人とこんなに喋ったの久しぶり」 祥一郎がびっくりしたように自分の顔を見上げるのが判って、舞は慌てて笑った。でも慌てたのが、彼にはバレたかもしれない。 「……じゃあ、淋しいな」 「ううん」 舞は即座に首を横に振った。 別に祥一郎を安心させようと思ったのではない、単に、それが事実だからだ。淋しくなんかない。 そんな風に、思わないようにしてるから。 あたしは一人で、だから一人でいるのが当たり前。特別なことじゃないの。 「平気」 淋しいなんて思ったらきっと……ていられなくなる。あれから一緒に暮らしてるママとさえ口をきいてない。学校でも一人で、お姉ちゃんにも会えなくて、だからずっとあたしだけがここにいて、ここがどこかなんてもう判らない、なんて。 考えたこともない。 「平気です、淋しくなんかないです、全然」 祥一郎は何か言おうとしたようだったが、舞が早口にきっぱり言い切ったので、結局黙った。 沈黙。 何だか変だ。あたし、余計なこと言っちゃったような気がする。祥一郎さんのこと何にも知らない、先刻会ったばっかりの人なのに。 まだ彼がまじまじと自分の顔を見上げているような気がして、舞は下が向けない。果てしなく続くような森のその先を、風に揺らされる葉を、その木の葉の間から覗く、切れ切れの空を見る。 でも、何だか。何となく、だけど。 似てるの。 「あ、──なあ」 祥一郎さんって、どっか。 お姉ちゃんに。 「あっち見ろよ、舞、なんか広くないか? あそこは木が生えてない感じだぞ」 「え?」 祥一郎がポケットの端を掴んで揺さぶるので、ぼんやりしていた舞も我に返った。祥一郎が指を差す方向、舞の目指しているのとは少しずれた二時の方角は、言われてみればそんな感じもする。 「行きます」 ここからはせいぜい百メートル、舞は彼を落とさないよう手でポケットを押さえて走っていった。かしげが楽しそうに後を追ってくる。 「う、わ……」 感嘆の声を上げたのは、自分か彼かどっちだろう。そこには、確かに木は生えていなかった。 渓谷、だ。森の際。 断崖絶壁。 どうりで、息が切れる筈よね。こんな高いところまで登ってくれば。 そーっと見下ろしてみた谷底は、命の要らない人は挑戦したら? という感じの、おっそろしく流れの急なライン川下り状態で、見てるだけで酔いそうだ。落ちたら確実に死ねるだろう。 舞の胸で、祥一郎もひえーと呟く。 「『激流』って、観た?」 「え? 映画の、ケビン・ベーコンが犯人の、川下りの?」 「そうそう。あれのロケ、この下の川使ったらもっと凄かっただろうなあ」 楽しそうな言い方に、舞は呆れて言い返した。 「ばか、そんなことしたらメリル・ストリープが死んじゃいますよ」 「そしたら『マディソン郡の橋』もないか。あれ観た?」 「ビデオでなら」 「泣いた?」 「……泣きました」 祥一郎があまりおかしそうにケタケタと笑うので、舞はつまみ出して落とす真似をしてやろうかと思ったが、やめておいた。本当に落とすといけない。 「もう、そんなに笑うことないじゃないですかっ」 「いや……悪い、実は俺も泣いたんだ」 「えっ」 「イーストウッドが気の毒で。いやー、あの雨のシーンはなあ、傘さしてやれよなあ」 「祥一郎さんて……もーっ」 天下の名作の、天下の名優に向かってなんということを言うのだ。 舞は危ないので少し下がって、背筋を伸ばして遠くを見やった。はるか眼下、見渡すかぎりの草原と、ところどころに森、そして街らしき集落が見える。 一通り眺め回して──舞は声にならない叫びを上げた。指先で祥一郎の体を叩いて、見えるものを指さす。 山を頂上だけスパッと切ってはげ山にしたような、山というか丘が、草原一つ挟んで目の前にある。砂で作られたステージのように見える、山のてっぺんに、何かがいるのだ。 何か、ではない。何かは判っている。はっきり判るくらい大きい。 「しょ、祥一郎さん、あれ」 「あれ……先刻の、ゴジラか?」 「ゴジラって言うより、コブラなんじゃ……」 あれが先刻、二人を追いかけてきたドラゴンなのだろうか。 頭に長い二本の角、肩の辺りにコウモリみたいな翼のある、巨大なコブラだ。『マンガ日本昔ばなし』のオープニングに出てきた竜のような、短い前足も二本ある。 「なんか、『エイジア』のアルバムのジャケットみたいだなあ。すげー絶景」 別に怖くはないらしく、呑気な口調で祥一郎が言う。 「知ってる? エイジア。ロックバンドの」 「すいません、知りません。最近の人ですか」 「いや、最近はどうなんだろう。全盛は八十年代だからなあ、舞は知らないか」 「すいません、八十年代はあたし、まだ小学生にもなってなかったので」 「ジェネレーション・ギャップってやつだな」 コブラ・ドラゴンの赤い目がこっちの方を見そうな気がして、舞はさっと木の間に身を隠した。とにかくこっちからは道には降りられそうにない。 「あたし、とにかく戻っ」 てみますね、と言いかけたのだが。 「ひゃあっ」 途中で悲鳴になってしまった。 「舞っ」 祥一郎としては、目一杯腕を広げて舞を庇ってくれようとしたらしい。だがいかんせん今の彼は手のひらサイズ、手を伸ばしたぐらいではコサージュにも劣るぐらいで。 「恐れるな、我は森の番人」 「……しゃ、……喋る、の?」 振り向いた舞の目の前に立っていたのは……な、何だろう? 背丈は舞の胸までしかない。全身を黒いレザーですっぽり覆っているみたいな姿で、でもレザーを着ているのではない証拠に、『エイリアン』か何かみたいな、白っぽい粘液が時々表面を滑り落ちる。手足はない。 人間なら顔のあるところが、ダイヤ形の、メタリックな青いガラスのようで、こっちを見ているのだろうか、あれで見えているのだろうか、でも恐ろしく無表情だ。 「な、何だって?」 祥一郎が喉に絡まる声を押し出した。 「罪深き生物を捧げよ」 「は?」 どこで喋ってるんだろう? だが少なくとも、声は普通だ。ちょっとハスキーな男の声に聞こえる。 「それがこの森を出るための手形」 言っている内容の方は意味不明だが。 「あ、えーと……何、ですって? それがないと、この森からは出られないんですか、ずっと?」 「是。我はそのためにいる。身に余るほどの遙か天空を駆け、他者の命の源泉を糧とする罪深き生き物を、我に捧げよ」 捧げよ、と言われても。 藪から棒に、何なんだ、一体。 舞と祥一郎は顔を見合わせる。 「今の、聞きました、よね?」 「ああ、うん」 「判りました?」 「全然」 二人は顔を見合わせたまま、二人して同時にハハハと空笑いした。 「どーしよ」 なんだか先刻から、あたしこればっかりだわ。 ◇ ◇ ◇ #
by new-chao
| 2005-05-10 12:55
| 小説-黄金のドア(3)
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