千里に乗って野道を駆けることどのくらいか、ほどなく小高い丘の上に、可愛らしいレンガ造りのお城が見えてきた。
ちなみに舞が歩いていたのと城のある位置は、まるっきり逆方向だった。もしあそこでショーンに出会わなかったら、と考えると、心臓がギュッと縮みそうだ。 慣れない馬での移動でお尻が痛いのを我慢したおかげで、一つ判ったことがある。アクセルが水都を連れて行った理由だ。 「俺は毎日、国中あっち行ったりこっち行ったりするから、いろんな話を聞くんだ。ここのお坊ちゃんは、清らかな乙女を花嫁にしたいんだそうだ。そうすると国にも幸せが訪れるって、占いで出たんだと」 「清らかな、って、……ヴァージンってこと?」 「そうだな」 舞はパチパチッと瞬きした。 「ヴァージンなら誰でもいいんですか?」 「舞、誰でもってことはないだろ」 マントの端をかき分けるようにして顔を出した祥一郎が、何故か焦ったように口を挟む。 「仮にも相手は王子様もどきなんだから」 「それがそうでもないらしい」 体を捩じって振り返っているので、揺れによろめく舞を肩で支えて、ショーンが焦げ茶の目を器用にウインクさせる。 「北の方にリーアってお姫サンがいるんだが、家柄も年回りもちょうどいいってんで声掛けたんだけど、あっさり断られたんだと。おかげで坊は彼女にフラれてからこっち、ほとんど誰でも、処女なら熱烈歓迎って感じらしい話だ」 「顔に似合わず無節操なんですねえ」 「会ったのか?」 「ちょっとですけど。まるで星の王子様ですよね」 そうだな、と頷くショーンを、側で見るとますますショーン・コネリーだ、と思って見上げていた舞は、祥一郎がげええと変な顔をしたことには気づかない。 「節操ナシっていうよりは、それだけ国民想いだって考えもあるが。そう思ってる方が、国民も気分いいだろう?」 「はあ……そうですね」 だが、本当にそうだろうか。 舞は暮れかけて白っぽくなった空に、アクセルの顔を思い浮かべる。 確かに超ハンサムだったけど。頭良くて几帳面そうで、でも……優しそうだったけ? 思いやり溢れてるみたいに見えたかな。大体、顔のいい人は性格が悪いって、世の習いじゃない? 偏見かなあ。 でも自分の一生より他人の幸せを択るような人が。 あんな風に女の子を、強引に連れて行くだろうか? 「お嬢よ、あれがヴァンスの城だよ。門の前までは連れてってやれるが、中にまでは入れないぞ。どうする?」 どうする? 彼の言い方は面白がってはいたが、優しい匂いみたいなものがした。 見知らぬ女の子を、ただで送ってくれて、心配までしてくれている。これ以上迷惑は掛けられない。 どうする? どうしよう。 どうにかするわよ。 「大丈夫です、どうもありがとうございました」 かしげを小脇に抱えて、舞は千里の体を滑るようにして降りた。マントを返す。 「何のお礼もできなくて、ごめんなさい」 「いいさ、一人で帰るより可愛い子と一緒の方が楽しい」 ショーンが手を伸ばすので、舞は握り返した。 「元気でな」 「ショーンさんも。あっ、もしあたしの元の国に来れることがあったら、また会いましょうね。津栗花ってとこに住んでるんで──あたしたちが来ちゃったってことは、逆もあるってことですよ、ね?」 「どうかな。でもその時は会いに行くよ」 「千里もありがと」 舞が馬の長い顔に軽くキスしてやると、千里はブヒヒヒンと笑ったような声を出した。 じゃあ、と手を振ってショーンは来た道を戻って行く。さて、と舞はかしげを下ろして腕を組んだ。 「舞の家、津栗花? なら俺の家とわりと近いな」 「そうなんですか? じゃ、帰ってからも会えますね」 さて、どうするか。 ショーンが降ろしてくれたのは、城を囲む城壁から二十メートルぐらい手前のところだった。黒塗りの鉄門の横に、身長より長い槍を持った番兵が二人、こっちを見ている。 でもこの距離なら、あの人達に祥一郎さんは見えてない筈。あたし一人みたいなもんよね。 やるか。 舞は腕を解いてズンズン歩きだした。 「おい、どーするんだ?」 「祥一郎さんは黙って隠れてて」 渋々、という感じで、祥一郎がポケットの中に引っ込む。 舞はそのまま門の手前まで行くと、若い番兵を無視して門の向こうへ声を張り上げた。 「未来の旦那サマに会いに、清らかな乙女が来たわよお! アクセル様ぁ!!」 祥一郎はポケットの中でずっこけたが、気持ちは番兵も同じだったらしい。 二十歳前ぐらいの番兵二人は、被っていた兜を少しずらして舞を見た。槍をクロスさせて、それ以上彼女が行けないようにする。 「娘、門から離れろ」 「約束もなく総統家に立ち入ることはできない」 「約束ならしたわよ!」 「いつ」 「夢の中で」 向かって右側の長髪ブロンドが、呆れたように笑った。まともに反応してくれる分、こっちの方が手玉に取りやすいかもしれない。 「だって、乙女と結婚したいんでしょ? するんなら売れ残っちゃったのより若い方がいーんじゃない? あたしなんかぴっちぴちの十四歳、きっちり未使用未経験、何の手垢も付いてないわよ!」 「証拠があるのか?」 訊いたのもブロンドの方だ。左のショートヘアは、相手になるな、と突っ付いている。表情は真面目だが、どうも……舞の足を見ているような気がしないでもない。 「むっ、失礼なこと言わないでよ! 出るとこ出ましょうか? まっさら完璧な、パーフェクトなヴァージンよ!! アクセルに会いにわざわざ遠くから来たんだから! 入れてよっ!!」 何を大声で言ってんだこのガキは、と祥一郎は額を押さえたが、もちろん舞には見えない。 舞が大声を出しているのには理由がある。ひょっとしたらいるかもしれない水都や芳真に、自分がここにいることを知らせられるかもしれないからだ。 「アクセルーっ! 会ってよーっ! もうっ、兵隊さんたち邪魔しないでよねええ!!」 この辺りは主要な道なのか、ちらほら人通り、というか馬通りがある。舞が騒いでいるのが面白いのか、通りすがりの人がこっちを見ている。 「こら、娘、静かにしないか。もう帰りなさい、アクセル様はお忙しい」 「やだっ、人の恋路を邪魔する奴は、って知らないの? あたし、彼に会うために、はるばる来たぜ函館なんだから!」 「はいはい、判ったから」 「判ってないわよっ! 入れてったら!! んもう、しょうがないなあ……」 舞がちらりとショートヘアを見ると、彼はさっと目を逸らした。だがどうやらこの様子から察するに、ショーンが言っていた通り、彼らはあんまり女の足を見たことがないらしい。 ミニスカートっつっても膝上五センチで、そんなにキワドクないんだけどなあ……もう一押し。 舞はスカートを摘むと、 「忍法・ちょっとだけヨ! ちらっとな」 裾を太股の真ん中までまくって見せた。 「うっ」 番兵二人は同時に呻き、槍のクロスが少しだけ緩んだ。 今だ。 「かしげ!!」 舞は槍をかい潜り、門をよじ登った。犬は隙間から中へ入り込み、慌てて追おうとした兵隊は下からまともに舞のスカートの中を見上げてしまい、よろよろした。 何よ、ノーパンだった訳じゃあるまいし。パンツ見られるぐらい、平気平気。 舞はどうにか無事、敷地内に入ることに成功した。 が。 ガッシャン! 今のは牢の鍵を掛けた音だ。日の光の入らない同じ室内で、芳真が呆れて寝ころんでいる。 「どーしてこうなるのっ」 舞の声は耳に入らなかったのか、彼女をここまで引っ立ててきた兵士は無言のまま去っていく。 ふと胸ポケットを触って、舞は真っ青になった。 ない。 ポケットには、何も入っていなかったのだ。 落としちゃった。 #
by new-chao
| 2005-06-07 16:29
| 小説-黄金のドア(5)
7. Dead Or Alive
前兆は、幼なじみの何気ない一言。 水都ちゃんってパパとママとどっち似? ──どっちにも似ていない。 それが子供の頃、最も水都を悩ませたことだった。自分は両親のどちらともまるで共通しているところがなく、成長するに従ってその差が開いていく一方だったから。 だが本当に。 自分が孤児だったのを知ったのは、わりと最近で、小学校を出る間際のことだ。 母は一生黙っているつもりだったらしい。水都が引き取られたのは赤ん坊の頃で、母としては我が子同然に思ってくれていたそうだから。だが親戚が話しているのを、彼女は偶然聞いてしまった。 ここまで育ててもらっているのに感謝が足りない、礼儀にかなっていない、などという親戚の言葉にも、余りにも両親と似ていない姿に成長していく自分に向けられる近所の目にも、水都を傷つけるほどの威力はない。偽りない愛情を注いでくれる両親のために、まるで気がついていない振りをし続けるのは、少しだけホネだったけれど。 だがそれよりも──水都を打ちのめしたのは、父の視線だ。 ここしばらく、おかしいとは思っていた。言葉では上手く説明できなくて、だから母にも何も話してはいなかったが、ようやく判った。自分はもう幼い子供ではなくて、……美しい少女であるらしいから。 私はお父さんの本当の娘じゃない。あの人の目には、私は女と映っている。 だから水都は髪を切って、話し方を変えた。元々それほど女らしい体型でもなかったし、背も高かったから、できるだけ男のように振る舞うようにして、父を牽制したのだ。 でも無駄だった。 昨夜、とうとう、父が水都の部屋へ来たのだ。 水都は抵抗し、重たい百科事典で父を殴って、母が止めるもの聞かずに家を飛び出して、願った。 消えてしまえばいい。私も。あの家も。 死ンデシマエバイイ。 真夜中の道路、当てもなく走って、いくつ目かの角を曲がったところへ車が──。 「もっと見たいか?」 まっすぐに水都を見たまま、囁くようにアクセルが言った。唇の端だけわずかに上がった、氷の微笑で。 「俺の体」 貫く視線。 吐く息も凍る。 「どうする」 水都は頷いた。凍りついてはいたが、傍目にはいつも通りの無表情であるだろう。と、思いたい。 指が長くて関節が滑らかで、指先まできれいなアクセルの手が、水都を焦らすように、ゆっくり包帯を解いていく。 見たくなかった。 見なくてももう判っている。彼の胸にこそ、生々しい火傷があること。 「……どうして」 水都の、少女にしては低めの声が、微かに震えていた。それに水都が気づいているかどうか。 襲われた城主は松明で暴漢を撃退した。 アクセルの胸に現れた傷は、適当に曲がった、蛇に似た形をしていた。総統が咄嗟に松明を振り回したのなら、当然こういう傷になるだろう。 焼けた鉄棒を押し当てられたような芳真の傷とは、まるで違う。まるで違うことはアクセルにだって判っていた筈だ。 「どうして? おまえも案外利口じゃないな。総統の寝首を掻こうとしたのがその息子じゃ、国民に対して体裁が悪いだろう」 「違う。……だってあんたの父親だろう」 「ああ」 どことなく門に描かれていた紋章のコブラに似た傷を、アクセルはそっと指でなぞって、痛そうに眉を顰めた。 「そのことか。一応はな」 「一応?」 「国民にはそう言ってある」 ハッとして水都がアクセルを見返した。アクセルは眉を上下させて見せる。 そうか。 そういう意味だったのか。自分とアクセルとが、同じ匂いがするというのは。 でもどうして。 「俺はそういう匂いが、何となく判るんだ。独特な、拗ねたような雰囲気がな。ヨシマにも少し似たようなところがあるが、俺たちとは違う。微妙に」 包帯をベッドに放り出して、アクセルは水都が蹴って倒したイスを起こし、腰掛けた。これ見よがしに胸を張って、長い足を組む。 「おまえには知る権利があるから、話してやろう。俺は占いで選ばれた息子で、おまえは占いで選ばれた俺の妻だ。この国の未来のために。もちろん、そんなこと知ってるのは当の本人と極少数だが」 前髪を掻き上げて、夕日に目を細めた。光に透ける深い蒼。 「だから俺は、その選択を認めた浅はかな嘘つきに、教えてやりたいのさ。おまえの思う通りにはならないということを。俺は駒ではないということを」 ふと、彼が左手を差し延べた。 「俺を突き出すか?」 こんな時でなければ、一曲お相手を、と誘っているかのような、優雅な動作で。 「おまえは綺麗だ。死なすには惜しい」 促されて、一歩近づいて、水都も手を伸ばした。 指先を、柔らかく、包み込むように。そっと握って。 「俺が怖いか」 「いや」 冷たい手。 怖がっているのは彼の方だ。 「……羨ましい」 それがいいかどうかはともかく、どうすれば自分の気が済むか、アクセルには判っている。逃げだすことしかできなかった私とは違う。 水都の言葉に彼は目を見張り、それから笑った。今度はちゃんと瞳も、顔全部で。 「さて、勇敢なお嬢さん。どうする?」 ◇ ◇ ◇ どうする? 「ねえ、ちょっと、大事な物失くしちゃったって言ってんでしょ、出してよお! おーい!!」 駄目か。 「ちぇっ」 ガン、と腹いせに一度鉄格子を蹴飛ばしてから、舞はどさっと壁にもたれて腰を降ろした。ふーっと上向きに溜め息をつくと、前髪が額をくすぐる。 あああ。 舞はもう一度胸のポケットを覗いて見る。空。何も入っていない。 運がいいのか悪いのか、先刻兵士に捕まって騒いでいる間に、かしげまでどこかへ行ってしまった。あのおとなしい犬は、どうやら異常に男が怖いらしい。 ノミを探した時に判ったが、かしげはオスだった。にも係わらずあんなに怖がりなのは、よっぽど気が弱いのか──酷い目に会わされたことがあるのか、どちらかだろう。 あの、人の顔色を窺っている黒い目。少し前の自分のような。 舞は乱れてひっ絡まっている髪を手ぐしでバサバサと直して、膝を山形に曲げた体操座りをした。 やれやれ、今更ジタバタしても始まらないし。 って言うより、ジタバタしすぎて疲れた。 「芳真君?」 でも、とりあえず一人じゃない。深く考えだすと息が詰まりそうな、狭い地下牢の中でも。 「肩、大丈夫?」 天井が低い。尻の下の土はひやりと冷たく、天井付近に付けられたろうそくの火は微妙に揺れて、目眩を起こしているような気になる。 「あん?」 組んだ両手を枕がわりにひっくり返ったまま、芳真は顔だけ舞の方に向けた。 長い金の前髪が左右に分かれて、白い額が見えている。細く整えられた眉。 「おまえ、そうやってると、こっからパンツ見えるぞ」 「げっ」 舞は焦って膝を倒した。暗くて見えないと思ったのに。 「うっそ、暗くて見えねーよ」 くくっ、と芳真が喉の奥で笑う。 「むか」 どうしたんだろう。昼間より当たりが柔らかい。それに、本人にバレたら怒るかもしんないけど、ガンつけてない時の芳真君て……可愛い顔してる。ちょっと女の子みたいだわ、笑ってると。 「おまえ何しに来たんだ? もう一人の、でっかい野郎は一緒じゃないのかよ」 「それがね、実は、お」 落としちゃって、って言うのは、マズいわよね。 「……はぐれちゃったの。このお城に入るところまでは一緒だった、と思うんだけど」 と、思うのだが。 いつ落としちゃったんだろう? やっぱり、門によじ登った時かな。 高いところから落ちて、頭打ったりしてたらどうしよう。それより誰かに踏んづけられたりしてたら。 かしげが気がついて拾って、あたしのこと探しに来てくれないかしら。……無理だよね、あたしとかしげだって、そんなに意志の疎通ができてる訳じゃないし。 「で? おまえも水都と同じ、王子様の嫁さん候補で来た訳?」 「ううん、あたしは違うけど。やっぱり水都さんはそうなんだ?」 「んなこと言ってたぜ。違うんなら何しに来たんだよ、まさか俺を助けになって言わねーよな。助けにきた奴は、普通同じ牢に入ったりしねーもんな」 「う」 そりゃそうだ。判ってるから苛めないで欲しい。 「なによ、偶然紛らわしい傷持ってるよりマシだと思うわ。芳真君こそ、呑気にひっくり返ったりして、これからどうするつもりな訳?」 そこまで言わなくても、と心の中でもう一人の自分が止めたけれど、つい舞は悪態をついてしまう。しばらくクラスメートと喋っていない反動で、悪口バリバリなのだろうか。 #
by new-chao
| 2005-06-07 16:26
| 小説-黄金のドア(5)
「どーするもこーするもねえよ」
だが、別に彼女の悪口を気にする風もなく、よいしょ、と反動つけて起き上がって、両手を枕にしたまま芳真は壁にもたれた。 「俺は処刑されるんだと、明日になったら」 「は? なんで!?」 「何でって、そんなこと俺が知るかよ。この雰囲気だとあれじゃねーの? オーソドックスにギロチンか、首吊りか」 「そうじゃなくてっ」 処刑の方法を訊いた訳ではないのだ。 舞は他人事のようにシレッとした表情でいる芳真に、ズリズリと膝でにじり寄った。 「どうして芳真君が処刑されなくちゃいけないの? 芳真君何にも悪いことしてないでしょう!?」 「いや、結構悪いことやってきたけど」 「だーかーら、そうじゃなくてっ」 「判ってるよ、わめくんじゃねーよ」 舞の高い声が石の天井に響いて、芳真は追い払うようにひらひら手を振った。 「ガキはじたばたするし女はギャーギャーわめくだろ、女ガキんなるとダブルパンチで手に負えねえよ。だから嫌いなんだ」 「めっ、メスガキ……!?」 人が心配してるのに、なんて酷い言いぐさだ。 昼間会った時より当たりが柔らかいと感じたのは、舞の気のせいだったらしい。 悪口バリバリなのは、クラスの子と喋ってない反動じゃないわ。相手に合わせると自然に毒舌になっちゃうのよ、あたし。きっと。 「ふんっ」 舞は思いっきり鼻であしらうと、にじり寄った後を消しながら元の場所に戻った。 なんで一緒に地下牢に閉じ込められてる相手が、よりにもよって意地悪感じ悪目つき悪の芳真バカで、美形で親切な水都さんや、男らしくて頼りになる祥一郎さんじゃないんだろう。 舞は横目でちらっと芳真を見た。芳真はそっぽを向いている。 同じ男でも、祥一郎さんとは全然違う。大違いだわ。祥一郎さんは大人だもん、人のことメスガキ呼ばわりなんか絶対しない。大体、そういう失礼なことを言っちゃうあたり、自分だって充分ガキじゃないの。年一つしか違わないくせに、大きな顔しないでよね。 ……でも。 舞はもう一度、大きな顔をした芳真の小さな横顔を盗み見た。 この人には、胸に、あんなに大きく目立つ傷がある。理由を訊かれても答えないってことは、逆に言えば、迂闊に言えないくらいの理由があるってこと。 芳真君みたいなタイプって、クラスに一人ぐらいいる。不良っぽくて、クールでハンサムで、とっつきにくいんだけど陰じゃすごく人気あったりして。彼にはその上大きな傷と、言えない秘密。 「……芳真君はそれでいいの? 犯人じゃないのに、処刑されちゃってさ」 そっと言ってみると、芳真は伸びすぎた前髪をゆっくり掻き上げて、目の端で舞を見た。銀のドクロの指輪がろうそくの明かりにぼんやりと光っている。 「人のこと心配してる余裕あんの? おまえだってこんなとこ閉じ込められて、明日をも知れない身ってヤツだぜ」 ちぇっ、可愛くない男だなあっ。 舞も負けじと横目で彼を睨み返した。 「そうやって話をすり替えると気が済む訳? 男のくせにだらしないわねぇ」 「おまえだって女のくせに可愛げがねーよ」 「それだけよく口が回るんなら、どうしてここの王子様も丸め込まないのよ?」 ふと、芳真が舞の方に顔を向けた。斜めに。 だから舞には彼の左目しか見えないが、何だか急に怖くて、後ろの壁にぴったり背中を張りつかせてしまった。 「何よ」 彼はこっちを向いている。でも舞のことは目に入っていない。 「俺は死んでもいい」 低い声で早口だった。聞き間違いだと思った。 「え?」 「ここで殺されてもいい」 「……え?」 何を言ってるんだろう? この男。冗談にしてはやけにシリアスな目つきで。 「なんて?」 舞の声に、芳真はもう二十度ばかり彼女の方を向いて、唇の端だけで笑った。 「三回も訊き返さなきゃならねーなんて、おまえ耳も悪いんだな。可哀相に」 むかっ、と一瞬は思ったが、それどころではなかった。 「ちょっ、何言ってんのよ、殺されてもいいなんて、あんた何か理由でもある訳っ?」 「ある」 芳真は長い睫毛を伏せて言った。 「俺が、ロクデナシだから」 「っ! なにそれ、冗談じゃないわよ!!」 舞は彼の胸ぐらに掴みかからんばかりの勢いで芳真に詰め寄った。 「あんたがロクデナシだってところに異議はないけどね、だからって、だからってなんであたしたちまで巻き添え食わなきゃいけないのよ! あたしたち四人揃ってないと、うちに帰れないんだからね、忘れたの!?」 わざとらしく耳を手でふさぎながら、芳真は舞をねめつけた。 「うち?」 「そうよ! やっぱり忘れてたのねっ」 「忘れてねーよ、水都もなんかそんなようなこと言ってやがった」 「他人事みたいに言わないでよ」 舞が耳をふさいでいる彼の腕を掴むと、芳真はすかさずその手を払い落とした。 昼間は傷を見せたくないからかと思ったが、どうやらそうではなく、いやそれもあったろうが、それ以上に、彼は他人に触られるのが嫌いらしい。 「うるっせえな、耳元で騒ぐんじゃねえよ。二度とギャーギャー言えないようにしてやろうか」 「やれば? 言っとくけどね、あたしそんな脅し全っ然怖くないからね。あたしをどうこうする体力があるんあら、この鉄格子の一枚や二枚どうにかしてみせたらどうなの? あんた先刻から口しか働かせてないわよ」 舞がちらっとも怯える様子を見せなかったからか、芳真は少し拍子抜けしたように舞の顔を見返した。舞は顔にかかる髪を、乱暴に後ろに払いのける。 「おまえだって」 「あたしだって何?」 「おまえだって、口しか働いてない」 「頭だって働いてます、考え中なんです、ただ諦めてボーッとしてるだけの誰かとは違って」 「フンッ」 先刻とは逆転して、芳真が負け惜しみ気味に鼻であしらって向こうを向いた。舞はそっと、彼から十センチ離れて隣に座った。 今日まで会ったことなくて、友達でも何でもないけど、でもあたしたちこうやって、同じ牢に閉じ込められてる。生きるのも死ぬのも運命共同体なのに。 どうしてここへ来てしまったのかなんて判らない。帰る方法も知らない。おまけに囚人扱いまでされてる。でも怖くないのは、一人じゃないからだわ。 今は芳真君が側にいてくれる。 たった一人、ちゃんと話しもできる仲間なのに。 こうやって、いつまで喧嘩してればいいの。 「……俺は帰りたくねんだよ」 不意に、芳真が言った。独り言みたいに、向こうを向いたまま。 「おまえは、帰りたいのか?」 低い声で早口に、でも聞き間違いじゃない。 ──改めて訊かれたくなかった。 舞が返事をしないので、芳真は舞の方を向いて、もう一度言った。 「帰りたいのか」 舞は目を逸らす。 胸の傷のことを訊かれた時の芳真と、同じ表情で。 両親が離婚に踏み切った本当の理由を、舞は知らない。訊いたこともないし、説明されたこともない。舞は子供で、いつも蚊帳の外だった。 結婚して十八年。きっと不満は、少しずつ積もっていったのだろう。降りだしたばかりの雪はアスファルトに触れた途端に溶けてしまうけれど、一晩経てばそのアスファルト一面を覆い尽くしているように。 だが舞には一つ、疑っていることがあった。父の不倫だ。父には女の気配がする。 三つ年上の姉、成美は、ひょっとすると本当のことを知っていたのかもしれない。でも成美は何も言わなかった。いつも優しくて、舞は姉を頼りにしていた。喧嘩に忙しくて母が食事の用意をしてくれない時は、黙って台所に立って、舞の話を聞き、制服にアイロンを掛けてくれた。 めったに怒らず、いつも何かを我慢している姉だった。まるで、自分さえびしょ濡れになればこの嵐が治まると、信じているみたいに。 それが歯痒くて、舞は怒ったことがある。 だが成美は笑って、大丈夫よ、とだけ言った。 大丈夫。口癖のように、いつも。 何が大丈夫なのよ。パパとママが階下で言い争ってる時、お姉ちゃんがこっそり泣いてるの、あたしが気がついてないとでも思ってんの? あたしだよ!? 自分たちのことしか考えられない両親じゃないんだから!! 言ってやろうかと思ったけれど、そうしたら余計に我慢するような気がして、やめた。 大丈夫だよ、舞。 本当にね。そうだったらいいのに。 離婚届を挟んで両親が向かい合った日、初めて舞は訊かれた。 どっちについて行く? 舞は母を選んだ。十四年間暮らしたこの家を、友達もいる学校を離れるのは嫌だったけれど、母が出た後、気配の女が新しい母として来ることになるかもしれないことの方が、もっと嫌だったのだ。 「あたしは、はっきり言ってママを選ぶわ。お姉ちゃんもね?」 白い紙に押印された朱肉の毒々しい赤から目を逸らして、舞は姉を見た。父も、ソファの間で立ったままの成美を見上げる。 「成美はパパを一人にしないよな?」 #
by new-chao
| 2005-06-07 16:23
| 小説-黄金のドア(5)
パパ、余計なこと言わないで! お姉ちゃんは頼まれたら嫌だなんて言わないんだから。我慢しちゃうんだから!
「あたしは」 「お姉ちゃん!」 成美が口を開く前に舞は呼んだ。必死だった。必死に呼ばないと、姉には自分の声が届かないような気がして。 お姉ちゃんだって、お姉ちゃんだって、浮気したら許さないって言ってたじゃない! 「舞」 成美はいつものように笑った。 「大丈夫よ。お姉ちゃんは、残る」 何が大丈夫なのよ、何が! あたしたちたった二人の姉妹なんだよ。パパとママは元は他人かもしれないけど、あたしとお姉ちゃんは違うんだよ。あたしこれから遠くに行くのに、何もかも一からになるのに、あたしを一人にするの? だが何も言えないまま、舞は家を出ることになった。祖父の家に向かう車の中で母が言った。 「お姉ちゃんが来ないなんて、ガッカリね、舞」 ……ああ、そう、なんだ。 口調は舞に向けられていたけれど、今のは独り言だった。本音だった。 ママはお姉ちゃんが欲しかったんだ。あたしじゃなくて。パパもあたしがママって言った時止めなかった。お姉ちゃんが残るって言ったら、にやって笑った。 そりゃお姉ちゃんはあたしより大人だし、頭もいいし、頼りになるわよ。あたしよりずっといい人間なのは当たり前だし、あたしだってそう思うし、判ってる。 判っては、いる、けど。 ……ママはあたしじゃ嫌だったんだ。 あたしは要らなかったんだ。パパも、あたしが残るって言わなくてホッとしたんだ。 どうして? あたしが子供でバカだから? あたしの方がお姉ちゃんより三年余計にお金が掛かるから? ねえ、なんでなのよ、判んないよ、そんなの、判んないよ! ごめんねママ、でもあたし、ママに捨てられたらどうやって生きて行けばいいか判らない。ごめんねママ、あたし、どこにも行けない。 ねえ、ママ教えて。 あたし、ここにいても、いいの? 「おまえには悪いけど、俺は戻れなくてもいい」 黙り込んでしまった舞の隣で、芳真は床に投げ出した自分の爪先を見下ろしながら言った。舞はその声に顔を上げた。 いい加減に伸ばした金髪で隠されて、彼の表情は見えない。 「俺が死んでも悲しむ奴いないし」 「なにそれ」 その言い方だと、まるで彼も、自分の家に身の置き所がないみたいではないか。 どっかの誰かと同じで。 「なによ、それ。じゃ、芳真君死んだら家の人喜ぶって言うの?」 「……そうだな」 前髪の向こうで、芳真の声がかすれて揺れた。笑ったのかもしれない。 嫌だ。 「やだ、ちょっと待ってよ、そんなの」 そんなの、それが本当なら。……しすぎる。 「待ってよ、芳真君それでいいのっ?」 舞は彼の腕を掴んでこっちを向かせようとしかけて、一瞬ためらって、だがやっぱりグイッと引っ張ってやった。すぐたたき落とされた。 「っ、何だよ、触んじゃねーよっ。よくても悪くても、相手がそうなんだからしょうがねえだろうが」 「違うわよ、そうじゃなくて、喜ばせといていいのかって言ってんのっ」 「は?」 やっと芳真がこっちを見た。舞は叩かれた手をさすりながら言った。 「芳真君が死んじゃったのに、それ喜んだりするような人を、そのままにしとく訳? 喜ばせちゃっていいの? あたしだったら、超悔しいわよ! そんな奴、素直に喜ばせてなんかやるもんか!」 「やるもんかって、なら、どーするんだよ」 「こんなところで死なないのよ!」 高らかに言い放って、舞はギュッと拳を握った。 「そりゃいつかは死ぬだろうけど、それまでは生きて、凄いことやって、目一杯楽しいことして幸せになって、そいつらギャフンって言わせてやんのよ、ざまあみろって言ってやるのよ!!」 舞の声が地下牢中に響きわたって、芳真は呆気に取られて絶句した。舞もゼーゼー言っている。 と。 「いやー、こりゃまた競馬馬並みに前向きな子だねえ。感心感心」 ハッとして舞は鉄格子に飛びついた。 興奮して演説ぶっていたので、気づかなかったのだろうか。手に松明を持った、やけに背の高い男が牢の外に立っている。フード付きの深緑のローブに、童顔。男なのにやけに胸が出っ張っている……と思ったら。 「かっ、……かしげ!!」 ひょ、とローブの襟から、鼻回りの黒い懐かしい顔が飛び出した。 「何しに来たんだよ、おっさん」 嫌そうに言う芳真を無視して、ノッポは腰をかがめて舞と目を合わせた。 「いやね、このムクムク騎士が裏庭の隠しドアの辺りをうろうろしてるから、地下牢にはどんなお姫サマが囚われてるのかと、ちょっと覗きに来た次第」 「お、……おじさん、誰?」 「おじさんとは心外な! いくつに見えます?」 何なんだろう? この人。 恐る恐る舞が手を出すと、男は何のためらいもなく犬を渡してくれた。鉄格子の間から、かしげの体は難なく中へ入った。おなかを触って、あっ、と言いそうになったが我慢する。 「いくつって、あたし男の人の年ってよく判んないんで」 「そこを何とか!」 「さ、三十……七、ぐらい?」 「ああああ」 男が悶え、芳真が笑った。 「一つ年食ったぜ、おっさん。若い時なんてホント一瞬で終わっちまったな」 「やかましいっ、勝手な発言は控えるように。お姫サマ、三十七のどこがおじさんなんです?」 「えっ」 ずいっと顔を近づけられて、舞はかしげを抱いたまま一歩下がった。 「だ、だって、うちのパパが四十一だから、四つしか違わないんじゃやっぱ、三十七もおじさんなんじゃあ」 「うむぅ、そりゃ私にも息子ぐらいおりますが」 男は空いている方の手で顎を撫でながら、うーむと唸っている。舞は芳真の側まで行って、小さな声で訊いてみた。 「ね、この人誰なの」 芳真も声を顰めて答える。 「ここの、占い師だってよ」 「兼、魔術師のクール・ロビンです」 ひそひそ話だが聞こえていたらしい。 舞はえへへへと愛想笑いをした。 「あの、それで? クールさん、あたしたちを出しに来てくれたんですか」 舞の問いにクールも笑顔で答える。 「いいえ、それはまだ。おい、兄ちゃん、真犯人は見つけられたのか?」 「そりゃ、おっさんの仕事だろうが。閉じ込められてる俺に何ができるってんだよ」 「あらら、そんな消極的なこと言って、少しはこっちの子の前向きさを見習いなさいよ。自分じゃ何にもしないでブツブツ言ってる男って、やーねえー」 男っぽい低音のまま急にオネエになってしまったので、舞は呆気に取られて、口を開けたまま頷いた。一体何なのだ。 しかしこの調子の良さなら、ぺらぺら喋ってくれるかもしれない。 「あ、あの、水都さんはどこにいるんですか? 無事ですよね?」 「ミトさん? ……あああの美人さんね、いますよ、一番南の、中庭が見えるゲストルームにね。無事かどうかは定かじゃないけど。いひひひ」 クールがいやらしい笑い方をするのでつられて笑ってしまってから、舞はハッと我に返った。 どーいう意味だ。 「ところで」 笑っていたクールが、不意に格子の間から松明を中に突っ込んだ。ぼわっ、と牢の内部が明るくなる。 「先刻から気になってるんだが……何だか知らない男の気配がするなあ」 ギク。 舞は咄嗟に、表情をクールに見られないように芳真の方を向いた。が、芳真もキョトンと舞を見た。 「何よ」 「何って、おまえ、男だったのか」 「ばっ、ばか、違うに決まってんでしょっ。おじさんが言ってるのはかしげのことよ」 「そうかな?」 クールが松明の先で、舞の手元を示した。舞はかしげに覆いかぶさるようにして自分の手元を見下ろした。 「あ」 茶色い犬の毛の間から、似たようなアースカラーの、でも紛れもなく人間の男用のごつい靴が。 「……祥一郎さん、バレてる」 「え? バレてるって何だよ?」 芳真も立ち上がり、犬の下を覗き込んだ。もぞもぞと犬の腹にしがみついていたらしい何かが毛を動かして、小さな手が、続いて頭と体が出てきた。 「あーあ」 「舞、こいつまだノミいるぞ。俺食われそうになっちまった。おまえのせいだぞ」 「げっ、こいつっ、おまえ、どうしたんだよ!?」 ミニチュア祥一郎に芳真は大声を上げ、舞を見て、クールを見た。クールはゆっくり瞬きして見せた。 「こっ、……小人……!?」 「牢の鍵を取って来れるな、今なら」 #
by new-chao
| 2005-06-07 16:20
| 小説-黄金のドア(5)
こんばんは。
昨日はあたしの祖父の一周忌、そしてお墓開きがありまして、一家で行ってきました。 母方のいとこのうち二人(二家族)が来ていて、うちのも合わせて全部で4人のチビッコがいたんですけど、これが見事に全員男。上から5歳(あっちゃん)4歳(けんちゃん)2歳(うちのチビ)1・5歳(てるちゃん)なんですが、おにいちゃん好きなうちのは相手をしてくれるのが相当に嬉しかったらしく、終始ハイテンションでした。 お坊さんのお経が始まると、いちおうあたしたちの隣に座布団に座って、父ちゃんの数珠を奪って腕にかけてみたり、あたしたちに合わせて手を合わせてお辞儀したり、お坊さんの真横まで行ってみたりアッチ行ったりコッチ行ったり・・・やりたい放題してました。 《熱心にお経の本を読む息子と、字を勉強するハトコたちの図》 でも去年(の四十九日)に比べたら全然! おとなしくして、お利巧になりましたね~。てるちゃんは初めからあっちこっち探検して遊んでて、ずっといとこのお嫁さんが追っかけまわしてましたが、この子がまたおとなしくて静かなんですよ。静かなチビというのはみんなに褒められる。うちのはお坊さんがなにやら鐘のようなものを衝くたびに、「はあい!」と合いの手を入れていて、うるさいやら微笑ましいやら・・・。 お焼香の段になると、順番にチビッコもやるもんですから、うちのもやりたがり、母ちゃんと一緒に前へ。灰で遊びたがるのを牽制しつつ、「はい手を合わせて。お辞儀して。これパラパラ・・・もういいもうやめろ、はいお辞儀。撤収」って感じで。いや、大人たちにはウケてるからいいんですが、大人も子供も、誰もお経なんか聞いちゃあいないのでした。 お墓はさすがに暑くて、うちのなんかは勝手に散策にいったり石投げたりしちゃってたんですが、幼稚園に行くぐらいになると結構大人の言うこと聞くようになるんですね。年長二人を黙らせるために、墓石に巻いてあった布を解いてくようすを見ながら従姉が「もうじきおじいちゃんが出てくるよ~」などと言ったら、園児たち「おじいちゃん出てくるって、楽しみだねー」ですって。笑える。 亡くなった祖父はどう思いながら聞いていたのだろうか・・・。 それよりお坊さんは、うちの親族一同のことをどう思ったのだろうか、気になる・・・。 #
by new-chao
| 2005-06-05 20:34
| チャオさんの独り言
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